Electromagnetically induced transparency (EIT)

電磁透過現象 (EIT:Electromagnetically Induced Transparency) は光の速度制御技術の候補として注目されている.

EIT を初めて理論的に提案したのは,1986 年ロシアの ゴーリキー州立大学の教授 Khanin と院生の Kocharovskaya で,1991年スタンフォード大学の Harris らによって初めて EIT は実験で示された.

EIT とは閉じた 3 つの準位と 2 つの電磁場の相互作用による現象のこと.

lambdafig

(\Omega_p,\Omega_dはRabi振動数)

3 準位系に 2 つのコヒーレントなプローブ光とドライブ光を照射する.本来ならプローブ光を吸収するが,EIT 状態の系(Dark state)では量子干渉効果により吸収しなくなる.

eqpsi

励起準位|a\rangleの係数がゼロであることから,励起準位からの蛍光は観測できない.

また,量子干渉効果を示す媒質においては吸収係数のみならず,屈折率分散もきわめて大きいので,群速度の低下も見込める.実験では8m/sまで光の群速度を低速化できたという報告もある.(10.1103/PhysRevLett.83.1767)

これが光メモリーの礎となる日は来るのか分からないが,光コンピュータ,

更に,量子ビット,重ねあわせ状態の実現,量子コンピュータの実現に繋がれば,と思う.

そして,僕は量子光学の研究から一歩引き,解析的な数学の研究に移ることとした.

作用保存則

あけましたおめでとうございました.

最近Feynman経路積分を勉強していた.

Feynman経路積分は,量子力学的粒子が地点Aをt=t_aで出発し(この状態を\langle\phi _a |とかく),地点Bにt=t_bに到着する(この状態を|\phi _b \rangleとかく)確率振幅\langle\phi _a | \phi _b \rangleを次のように与える.

\langle\phi _a | \phi _b\rangle= \displaystyle \sum_{All path}\exp \Bigl[ \dfrac{i}{\hbar}S_{A\rightarrow B} \Bigr]=\sum_{All path}\exp \Bigl[ \dfrac{i}{\hbar}\int_{t_a}^{t_b} L dt \Bigr]

ただし,Lは粒子のLagrangianで,和はAからBを通る全ての経路についてとる.

気になったのは,\int L dtの箇所である.

Lagrangianはエネルギーであるから,単位は[J]

それを時間積分して,S[J \cdot s].これは”作用”という物理量らしい.”最小作用原理” とかのアレ.

そんな訳で,作用の次元はML^2 T^{-1}

Lagrangianの次元はML^2 T^{-2}.これを時間積分して,作用を得る.

ところで,運動量を考える.運動量Pの次元はMLT^{-1}.これを距離で積分すれば,計算上はまたもや作用を得る.

何だか,運動量で書き換えることが出来そうだ.

いくつか修正をしよう.距離積分というより,経路積分だ.そして,Pはベクトルで微小経路dsもベクトルだ.

すると,S =\displaystyle\int_{path}{\bf P\cdot ds}と書き換えることができそう.

Feynmanの経路積分は\langle\phi _a | \phi _b\rangle= \displaystyle \sum_{All path}\exp \Bigl[ \dfrac{i}{\hbar}\int_{A}^{B}{\bf P\cdot ds} \Bigr]となる.

このほうが,和も積分も経路で統一されていて分かりやすいと思うんだけど.

ただ,,運動量Pの経路積分?がちょっと分からない.

 

そこで,もう少し考えてみる.っていうか,運動量とラグランジアン(=エネルギー)って共通点ありまくるよね.

“運動量保存則”,”エネルギー保存則”

高校生の頃,これらが独立であることに何ら疑問は持たなかったけど,(2体の衝突問題でこの2式の連立方程式の面倒くささは高校物理髄一)

何だか,「この2つの保存則を1つの保存則で書き表したい」衝動に駆られた.

 

そこで,作用Sを次のように考えてはどうか.

S =\displaystyle\int_{path}{\bf P\cdot ds}= {\bf P\cdot s} + i L t

…複素数かい!! でも,確率振幅っていう前例があるし!!(虚数の理由は後述)

物理量Sとしては,Sの絶対値を取ることで無事に単位[J \cdot s]を得る.

さて,これの何が嬉しいかと言われたら,{\bf P}=\dfrac{\partial S}{\partial{\bf s}}, L=\dfrac{\partial S}{i\partial t} と逆に定義できることになる.

 

例えば,1次元上を等速直線運動する質量mの粒子を考える.粒子は距離xを時間tで進むとすれば,v=\dfrac{x}{t}

S =\displaystyle\int_{path}{\bf P\cdot ds} = m\int vdx = m\int \dfrac{x}{t}dx =\dfrac{mx^2}{2t}

すると,

\dfrac{\partial S}{\partial {\bf s}}=\dfrac{\partial}{\partial x}\dfrac{mx^2}{2t} = mv = {\bf P}は自明にしても

\dfrac{\partial S}{i\partial t}=\dfrac{\partial}{i\partial t}\dfrac{mx^2}{2t}=i\dfrac{1}{2}mv^2=iTにはちょっと驚く.(Tは運動エネルギー)

そうすると,運動量保存則もエネルギー保存則も一緒にしてしまって,

”作用保存則”と言えるのではないか.

運動量保存則とエネルギー保存則の独立性は,Sの実部虚部が保証してくれる.

そして,虚部を時間にしたのは,相対性理論の世界距離あたりからの連想である.

ふっは,これは面白いや.

…しかし,嬉しくなって波長\lambdaの光子に適応すると忽ち破綻する.

それは,単位に登場する時間が虚数単位でないからであって,時間の単位は[s](実数)というより[i s](純虚数)であって欲しい.

(確率振幅のような,複素数単位の物理量ファミリーをもっと増やしてあげよう!! 現実に観測するときには,例によって絶対値をとる.)

この要請(?)によれば,\nu\rightarrow\dfrac{\nu}{i}と書き換えられ,\nu\rightarrow\dfrac{c}{\lambda i}となるので,

運動量p=\dfrac{h}{\lambda},エネルギー\varepsilon=h\nu\rightarrow\dfrac{hc}{\lambda i}となって,

少しの計算の後,無事に”作用保存則”が成立することがわかる.

が,しかし

ここまで単位系を都合よく弄ればそりゃあ何でも出来るだろう,という気もしないでもない.

 

しかし,確率振幅以外にも複素数の物理量があってもいいと思うんだけどなあ.特に,時間が入った単位は割とガチで.

超伝導の探求

超伝導の探究
超伝導の探求

超伝導の研究室に,のぞきに行った時借りた.読了.歴史中心.あまり数式が出てこない.読みやすいが頭に残りにくい.

超伝導はオネスによって1911年発見された.彼は低温での金属の電気抵抗値を調べていた.

常温では銅や金は水銀と比べれば非常に優秀な伝導体である.これらは低温下でも電気抵抗値はあまり変化がなく,優秀な伝導効果を示す.

しかし,水銀は温度を下げると電気抵抗値はみるみる下降し,やがて銅や金を抜き,ついに4.19Kで電気抵抗値が少なくとも10万分の1オーム以下になっていることを発見した.電気抵抗値が非常に小さく存在するのか,それとも真に0(完全導体)であるのか,これは測定機器の限界でもあり,理論の完成が待たれた.

時代は20世紀初頭.物理界は相対性理論や量子力学の構築に邁進していた.その中で,超伝導という現象はあまりにも難解なため当時は着目されなかった.

この時に分かっていた超伝導体の性質は,

「温度を上昇させる,ないしは外部磁場をかける」とどんな超伝導体も常伝導体(普通の金属)となる

ということだけだった.外部磁場ゼロで常伝導体が超伝導体になる温度を転移温度T_cといい,常伝導体が超伝導体になるときの外部磁場を臨界磁場H_cという.臨界磁場H_cは転移温度T_cではゼロである。温度Tの下降と共に大きくなる.次のようにかける.

H_c(T)=H_c(0)\Bigl(1-\Bigl(\dfrac{T}{T_c}\Bigr)^2\Bigr)

超伝導が再び脚光を浴びたのは,1933年のマイスナー効果の発見である.

まずはファラデーの電磁誘導の法則の確認から.常伝導体に外部磁場をかけると,磁場を打ち消す向きに電流が流れる.金属内の抵抗により,この電流はまもなく消滅し,打ち消す磁場はいなくなる.つまり,外部磁場が筒抜けになる.

そして,超伝導体に外部磁場をかけると,磁場を打ち消す向きに電流が流れるところまでは常伝導体と同じ.しかし,金属内の抵抗は0だから,電流は消滅しない.つまり,外部磁場を打ち消す磁場を発生しつづけ,正味の内部磁場はゼロになる.

さて,常伝導体に外部磁場をかける.外部磁場は筒抜けとなる.この状態で温度を下げ,超伝導体とする.すると,超伝導体の中に磁場が存在する状態が生まれる…のかと思いきや,超伝導体は猛烈な勢いでこの磁場を外に追い出す!! これがマイスナー効果である.

つまり,超伝導体は内部に磁場を許さない性質―完全反磁性―として知られることになった.

反磁性とは,磁石のN極,S極の両方ともに反発する性質である.え?そんなん存在すんの? 調べたら標準状態で最大の反磁性を持つのはビスマスとな.なんだよそれ,元素記号すら知らんわ.(Biです.エアリー関数かと思った俺はBessel関数のやりすぎ!←)

でも反磁性っていうのは実はどんな物質も持っているらしい.すごく小さいが.蛇口から水を流しているところに磁石を近づけると水が曲がるらしい.これも反磁性.

ここで,「超伝導体」の2つの性質「完全導体」と「完全反磁性」が発見されたが,まもなく「完全反磁性」こそが超伝導体の本質であることが理解された.なぜなら,もし「超伝導体」=「完全導体」ならば,常伝導体に外部磁場をかけて,磁場がある状態で温度を下げ「超伝導体」=「完全導体」とし,外部磁場をかけるのをやめると,今度はこの磁場を補う向きに電流が流れ,「完全導体」のために電流は流れ続け,その結果この「超伝導体」は磁石のようにふるまうはずである.しかし,実際にはマイスナー効果のように振舞う.つまり,超伝導体は外部磁場を外に追い出す働きしかしないのであって,積極的に磁場を形成する(強磁性体という)わけではないのだ.

「超伝導体」と「完全導体」は同じものではなかった.「完全導体」であることは必ずしも「超伝導体」であることを意味しない.理論的には「完全導体」であっても「超伝導体」でないものが存在してもよいことになっている.完全導体\supset超伝導体である.ただし,現実には反例(となる物質)はまだない.

マイスナー効果の2年後には,ロンドン兄弟によるロンドン方程式が発表され,現象論としてマイスナー効果は解明された.

1950年にはロンドン理論を精密化した,ギンツブルグ-ランダウ理論が発表されたが,その3年後,BCS理論によって完全に超伝導現象は解明された.

それはズバリ電子の「クーパー対」と呼ばれる考え方に拠る.これは,あろうことかクーロン反発で近寄るはずのない2個の電子がセット(クーパー対)になっているというのだ!

この奇想天外なアイディアは,無から出てきたものではない.それは「磁束の量子化」からの帰結であった.

先ほど,超伝導体は磁束が侵入しないことを強調したが,実は無理矢理押しこんでやると,今度は超伝導体が磁束を掴んで離さなくなる.もはやイミフwww

実は,超伝導体の内部の磁束は\dfrac{h}{2e}の整数倍の磁束しか許されない.これ以外の磁場では超伝導体のポテンシャルエネルギーが不安定になる.超伝導体には超伝導体なりの理屈があるのだ.

ここに2eというのがあるのは,間違いなくクーパー対の貢献である.低温下でブラウン運動の少ない電子らのうち,スピンが互いに逆向きの電子らは真に量子力学的な力「交換力」によってクーロン力と釣り合うことができる.これがクーパー対の正体.

そして,クーパー対は非常に大きい.二つの電子の間に原子数百個は入る.金属格子の中を電子が通ると,そのものすごく遠くから電子が一直線に追いかけてくる.これに寄せられた金属格子はさらに電子を呼ぶ.クーパー対を呼ぶ.こうして,同じ箇所を一度電子が通ると多くの電子がその同じ道筋を通ろうとする.これが,電流の通りやすさ,すなわち電気抵抗値が極端に低い理由となる.低温下なので,原子の熱振動もほぼない.

常伝導体中の電子は,熱振動する原子間をあっちにフラフラ,こっちにフラフラしながら進んでいくが.超伝導体中の電子(クーパー対)は快適に障害物だらけの金属を進んでいくことができる.

さらには,フェルミオンの電子が二つになるのだから,クーパー対はボソンである.つまり,全体で一つの基底状態が取れる.クーパー対の分布を記述する統計は,電子のフェルミ-ディラック統計ではなく,ボーズ-アインシュタイン統計となる.全く様子が変わる.

ま,研究室訪問して分かったのはこれぐらい.まあまあ面白そう.