日本の原子力発電の安全対策

東北地方太平洋沖地震M8.8で発生した津波が
福島第一原子力発電所を直撃し,炉心溶融を起こしたようだ.
日本で炉心溶融を起こした事故は初.
最悪の事態は免れたようだが悲観的な情報が多い中,原子力に対して批判的な人々の声が高まっていくのを感じる.

俺は日本の原子力技術は世界最高峰にあると思っている.
本エントリーは日本の原子力発電所の運営管理が高水準にあることを説明してみたい.
ソースは被災当時,偶然観ていた「知ってなっとく地層処分」という経済産業省資源エネルギー庁制作のDVD と原子力発電所の地震対策東京電力の地震対策

周知の通り日本は島国で資源に乏しいため,国内で消費されるエネルギー資源の96%が輸入である.また,原子力発電の割合は全発電量の31%にのぼる.(2005年)

資源であるウランは世界中に分布しており,この事は政情不安や天災の影響を受けにくく,資源の安定供給が見込める.近年では,海中にも微量のウランが溶け込んでいることがわかり,四方を海で囲まれる日本としては現在その回収技術が実用化に向けて進行中である.

次に,地球温暖化効果のある二酸化炭素を排出しないという意味においてクリーンなエネルギーということができる.ウラン1gから得られる電気は石炭3tを燃焼させたときの火力発電量と等しく,また石油 2000Lを燃焼させたときの発電量と等しい.もちろん燃料が軽量であるほど搬送時のエネルギー消費は少なくなり,地球にやさしい.また,太陽光発電所は建設時に多量の二酸化炭素を排出し,これは原子力発電所の建設時に発生する二酸化炭素量の2倍以上である.

そして,ウランの95%は再利用可能な資源である.原子炉から出た使用済み核燃料の中から使用可能なウランを取り出し,再処理を施せば再利用ができる(現在日本に再処理施設はなく外国に委託).残りの5%が高濃度放射性廃棄物として,地層処分される.

地層処分の流れは次の通り.
この高濃度放射性廃棄物は非常に厳重な幾層ものバリアで放射線が漏れ出る可能性はほとんどない.まず,この放射性廃棄物は青森県六ヶ所村で30年以上,一次保管される.核崩壊の際に熱が発生するため,時間をかけて冷却しているのである.次に,ガラスに溶け込ませて固める.これは例えば色ガラスが割れても色素が出てこないことと似ている.これをガラス固化体といい、その外を鉄製容器、そのさらに外に粘土の緩衝剤、そして,これを地下300mに処分する.これほどの地下では地層の流れが数mm/年ととても遅い.また,地震があっても岩盤ごと揺れるので地下の揺れは少ない.

原子力発電所の地震対策は次の通り.

活断層から離れた所に考えうる限りの最大の地震を予測して,過去の津波の調査などから十分な余裕のある高さに建設される.原子力発電所が海に隣接して建設されるのは,大量の冷却水が必要であること,海側半分は住宅が存在しないことが大きな理由である.このため,日本の原子力発電所は全て海に隣接して建てられている.

次に,原子炉の停止システムを解説するために原子核分裂反応について説明する.
原子炉の中では原子核分裂反応が起こる.

{}^{235}{\rm U} +n \longrightarrow {}^{95}{\rm Y}+{}^{139}{\rm I}+2n

反応後の物質にはいろいろあるが大事なのは,分裂後に中性子が再び発生することで,これが別のウランにぶつかり,反応は連鎖的に進んでいく.しかし,分裂後に発生する中性子は衝突させるには速すぎるので,水などで減速させる.原子力発電所ではこのように反応を制御下におかなくてはならない.

震度5以上の揺れを感知すると原子炉は自動的に停止する.これは減速材でつくられた制御棒の一斉挿入によって中性子の拡散を防止する.
しかし,冷却水の減少時には原子炉の緊急停止を行なっても、炉心の余熱と放射性物質の崩壊熱による高熱で炉心が破損・溶解する危険性がある.
この際,原子炉の中へ大量の水を送り込んだり,燃料棒に直接水をかけて冷やしたりして,燃料棒の熱による破損を防止しなくてはならない.このシステムを緊急炉心冷却装置(ECCS)と呼び,今回の事故ではこれが電力不足などのために動作しなかったようだ.

冷却水が少なくなるという同様の事故は,1979年アメリカでスリーマイル島の原子力発電所で起こった.この事故ではECCSが作動したにも関わらず,作業員の勘違いによって手動でECCSが停止されるという,人的災害であった.しかし,周辺住民の被曝は0.01-1mSv程度であった.人が一生の間に被曝する自然放射線の量は約160mSvであると言われている.

現時点では,被曝者がどれぐらいいるのかまだよく分からないが,被曝者が発生したという意味において,スリーマイル島事故と同規模の事故と考えてもよい.チェルノブイリ事故は,日本で使っている軽水炉ではなかったのであれだけ大きな事故になったのであって,今回の事故はチェルノブイリ級事故にまで発展しないし,その恐れは原理上ない.

今回の事故から反省すべきことはたくさんある.組織の情報伝達は適正であったのだろうか.
15時36分過ぎに発生した水素爆発の発表が,原子力安全・保安院からおよそ2時間後に会見があった.それも全く被害状況を把握していない様子のもので憤りを感じた人も多かったと思う.
これからも緊急情報の取捨選択は我々個人に委ねられており,誤った情報を拡散することはさらなる混乱を引き起こす.
気を抜くことなく,被災地の一日も早い復興を祈ろう.

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