心はどのように遺伝するか

Evernoteサルベージ企画第二弾.読んだのは昨年8月頃.

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心はどのように遺伝するか

多量の双生児サンプルによって,行動心理学の観点から遺伝観を研究している本.

行動心理学では,過去大きな捏造事件があった.科学実験のデータ捏造はスポーツのドーピングぐらいルール違反だ.

しかし,その後何度信頼できる実験をしても,皮肉なことに捏造された結果を裏付けるだけだった.

その結果とは,一卵性双生児は二卵性双生児よりも類似する.「歳をとるほどに」


IQと学業成績の相関は約0.7らしい (相関係数が1ならば正比例する)

ところが,同居する一卵性双生児のIQの相関は0.86

これは,同一人物があまり時間をあけないで同じ知能検索を二回行ったときの相関に匹敵する.
IQテストもパーソナリティテストも,もともと遺伝情報のことをあらかじめ知っていて作られたものではない.

にもかかわらず,そこに遺伝的影響が見られるという事実を重く受け止めなくてはならないのではないか.

さらには,この正の相関は他の多くの信頼できる心理テストでも頻繁に見られる.

非相加的遺伝効果[Emergenesis-家系に伝わらないであろう遺伝形質]というものがある.

端的に言えば遺伝しない遺伝のこと.足し算にならない.

性格の外交性や自閉症の度合い.顔の美しさ,などが代表的である.面白い!顔が醜いからといって親を憎む道理はない.

一卵性双生児をサンプルで分かったのは,共有環境よりも非共有環境の方が大事であるということ.

行動や能力が遺伝の影響を受け,その行動や能力の結果も遺伝の影響を受ける.つまり,環境もまた遺伝的なのではないか.と著者は言う.

論理能力,言語能力に優れた子供には文法の授業が,そうでない子供にはコミュニケーション中心の授業がよい.

一方,外交的な子供にはコミュニケーション中心の授業,そうでない子供には文法の授業が適しているらしい.

遺伝的な条件を背負う人間に対して,その遺伝的条件の発現の場を与えるのが教育であり,ないから与えるのではなく,もともと持ち合わせていたものに使う場を与え,それを使用する中で自らの発達を促しているのが教育であるらしい.

教育を通して実現される自己形成は決して「教育だけが」成し遂げるものなのではなく,学習者の総体(親,教師,先輩,友達etc…)がもたらす自然の営みである.

それでもなお,心が遺伝するということに異論を唱える者がいる.

人の心も遺伝するのは当然であり,人間の心に遺伝的影響があるからこそ,人間一人一人は多様的なのだ!! と著者は言い放つ.

琉球音楽は5音しかない.量的な少なさが,質的な貧困に結びつかないどころか,むしろ音楽の豊かさを生んでいる.DNAがたった四種類のアミノ酸からなるというだけで遺伝の多様性を貧しいものと決め付けることはできない.

次のように反論を迎え撃とう.

  • 心は遺伝的でない→遺伝的違いを反映した行動や物の考え方が,事実存在する
  • 親から子に伝わる→確率的に伝達しやすいだけで,多数の遺伝子の組み合わせは親子でも兄弟でも異なる.遺伝子は類似性の原因であると同時に非類似性の原因である.
  • 遺伝的だと一生変わらない→環境によって発現した新しい変化というものが見つかっている.遺伝的影響が死ぬまで持続するかどうかはわからない.
  • 遺伝的なものは自動的に発現する→学習が成立する場が与えられないと,いつまでも表現型となって現れることはない.
  • 遺伝だと教育できない→遺伝の資質に関係なく与えられた教育環境の効果が加算される.遺伝が上限を定めることについては何の根拠もない.
  • 環境は遺伝ではない→自分がどんな環境を選択するか,人からどんな働きかけを受けやすいかによって遺伝的影響も変わる.
  • 遺伝は環境ではない→遺伝的資質はそれが成立する場としての環境が与えられて始めて発現する.哺乳類の先祖は,地球環境の変化に対応する遺伝子を自然淘汰,性淘汰してきた.
  • 遺伝だと原因遺伝子が存在する→行動や性格が発現した際,それは複雑で複数の遺伝子の影響であることが多く,原因遺伝子の存在には慎重にならざるを得ない.
  • 遺伝現象は生物学的現象→テストの結果に相関があった以上,社会的現象と心理的現象は,生物学的現象とは全く別次元とはいえない.
  • 遺伝決定論者がいる→お前は環境決定論者か.

知能の遺伝率は次のようにして増加する.息子を自分のように賢くするために.

  1. 遺伝子の発現自体の時間的変化 ― 鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス
  2. 環境に伴う遺伝子の新しい表現の発現 ― 新しい環境にさらされることによって,新しいことを学ぶのは遺伝ではないと思うかもしれないが,新しい環境に適応するための変化の仕方に遺伝要因がかかわっているかもしれない
  3. 環境が遺伝的資質を増幅する ― 資質を伸ばすことが大事.資質がないのに育むことは時間の無駄.

遺伝子 ― 受け継がれるのは可能性,賢い親の子供は賢くなる確率が高い.

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